長南です。 一応ですが、チェックがやっと終わりました。いろいろ個人的な用事が重なったとは言え、 二ヶ月ぐらいかかってしまいました。投稿からだと、三ヶ月になりますね。 このマニュアルの翻訳は長い上に、問題になるところがかなりあるので (原文にも あります。それについては、後で書きます)、cal の場合のように問題点を一つ一つ 取り上げて説明するという方法は使えませんでした。あまりにも説明のメールが 長くなりすぎてしまうからです。 それで、佐藤さんの翻訳を直接上書きするという方法を取りました。 間違いとは言えないかもしれないけれど、ここはこう訳した方がよいのではないか というところまで、勢いで書き直してしまいましたから (「これはお上手な訳だな」 と思ったところは、積極的に残したのですが)、私がどこを問題にしているかを 知るには、不便になってしまったと思います。まあ、パラグラフを一つ一つ比較 したとき、両者が意味的に違っているところが、問題箇所なんですけれど。 佐藤さんとしては、私が手を入れたものを元にして、さらに手を入れてもよいし、 私のバージョンを参考にして、ご自分の訳を推敲なさってもよいと思います。 「後は任せるから、引き継いでくれ」という第三の道でも構いません。 ここで、原文にどんな問題があるか、一例を挙げておきます。 --no-unquote Do not unquote input file or member names. --unquote Unquote file or member names (default). この unquote は「クォートを除去する」とか「引用終わり」の意味ではなく、 「クォートを開く」ということのようです。つまり、「入力ファイル名やメンバー名中の バックスラッシュでクォートされた \t, \n, \b のようなシーケンスを、タブ、改行、 バックスペースなどに解釈して変換する」ということ。そんなこと、実際に動かして、 いろいろ試してみるか、info tar を読むかしなければ、わかるわけがありません (info には、--no-unquote について "Treat all input file or member names literally, do not interpret escape sequences" と書いて ありました)。これは、マニュアルの著者の、というより、tar の作者の俺サマ用語 なんじゃないかと思います。それとも、unquote にそういう使い方が普通に あるんでしょうか。 一般化すると、この man ページの原文は、言葉を読んでいただけでは、間違いかねない。 実際に動かしたり、info tar で確認する必要があるということです。 使用した訳語について、いくつか説明しておきます。 extract: 「抽出」と「展開」が混じっていたので、「抽出」に統一しました。 「抽出」の方が extract の訳語としては忠実でしょうし、 アーカイブからメンバーを 1 個だけ取り出すのは、「展開」と いうより「抽出」でしょう。でも、メンバーを全部取り出すには、 「展開」がふさわしい。一長一短だと思います。 decompress: これは「伸長」にしました。私としては "compress/decompress" を 「圧縮/展開」と訳すのが、一番自然な気がするのですが、 「展開」は extract の訳語にもなりうるので、紛らわしいと思います。 「解凍」は感覚的で洒落ていますが、「圧縮/解凍」が対に なっていません。gzip や bzip2 の manpage の翻訳では、 「圧縮/伸長」を使っています。そこで、「伸長」にしておきました。 extract や decompress の訳語については、どれを選んでも、一貫していて、 紛らわしくなければ、それでよいと思います。 list: 基本的に「内容表示」にしました (「一覧」を残したところも 一箇所あります)。アーカイブのメンバーを 1 個、あるいは 数個だけ表示する場合もあるわけで、「一覧」はちょっと 言い過ぎではないかと思うからです。 time: mtime, ctime などとの関連で使うときは、基本的に「時刻」ではなく 「日時」にしました。その方がふさわしいときは、私ももちろん「時刻、 時間」を使います。 mtime: 「更新日時」にしました。既存のテキストファイルに文章を書き込むのは、 更新ではあっても、必ずしも修正とはかぎりません。ですから、意味的には、 「修正日時」というのはずれていると思います。しかし、「更新日時」は ctime の「変更日時」と字面が似ているので、「修正日時」を選ぶのも 一理あります。 sparse file: 「疎らなファイル」という訳をよく見ますが、イメージがわきませんし、 あまり格好のよくない日本語だと思います。私が find の manpage の 改訂をしたとき、前の翻訳の訳は「穴空きファイル」になっていました。 これは、イメージがはっきりしていて、よい訳だと思い、踏襲したのですが、 あまり使っている例を見かけません (ないわけではありませんが)。 それで、「スパースファイル」とカタカナにしておくのが妥当ではないか と思っています。 the complete manual: これはほとんど私の好みの問題ですが、こうした文脈で complete を「完全な」と訳すのは賛成できません。complete と perfect は違いますし、「完全なマニュアル」なんて存在しないからです。 この場合、complete は、「簡易版、簡略版」ではないということでは ないでしょうか。ですから、「完全」を使うのなら、「完全版の」と 言うところです。「完備した、包括的な、網羅的な」なども考えられますが、 「詳細な」で十分だと思います。一番素直な言い方ですし。 私にわからなかったところを挙げておきます。 ○ --group-map と --owner-map: "As a result" をどう訳すか。「結果として」ではイマイチつながりが悪い 気がします。「その結果、つまるところ、とどのつまり、要するに」など、いろいろ 考えたのですが、どれもやっぱりピッタリな気がしません。一応「つまるところ」に しておきましたけれど。 ○ -h, --dereference: Follow symlinks; archive and dump the files they point to. この "archive and dump" って何なんでしょう。動詞として使った場合、 archive も dump も事実上同じことなんじゃないんでしょうか。強いて言えば、 archive はアーカイブを作ることで、dump は個々のファイルやディレクトリを アーカイブに入れることぐらいの区別かも。私はここを「アーカイブに入れる」と 訳しておきました。 この "archive and dump" は、次の項目、--hard-dereference にもあります。 ○ --warning=KEYWORD のキーワードの一つ: bad-dumpdir "Malformed dumpdir: 'X' never used" "不正形式の dumpdir: 'X' が未使用" これは、メッセージカタログの訳の流用ですから、あまりこちらで気にする必要は ないのでしょうが、「不正形式」とか「未使用」とか、「本当にそういう意味かなあ」 と思わずにはいられません。と言って、代案も思いつかないのですが。 ○ 私は、テープドライブを使ったことがありません。ですから、テープドライブ関係の 部分は、「たぶんこういうことだろう」ぐらいで訳しています。よくご存じの方に チェックしていただきたいと思います。 私が手を入れた訳にも、間違えているところや、佐藤さんにとって納得できない ところが、当然あると思います。指摘していただければ、できるだけ考えます。 手を入れた原稿は、圧縮して添付します。 -- 長南洋一 -------------- next part -------------- テキスト形式以外の添付ファイルを保管しました... ファイル名: tar.new.gz 型: application/octet-stream サイズ: 29509 バイト 説明: 無し URL: <https://lists.osdn.me/mailman/archives/linuxjm-discuss/attachments/20190928/f9b40345/attachment-0001.obj>