こんにちは、大久保です。
http://classicalepwing.sourceforge.jp/
いままでこのプロジェクトはギリシャ語・ラテン語を軸にしてきましたが、 がらっと変えて、源氏物語の EPWING 版と ePub 版を作成しました。 日本人なのですし、源氏物語を素通りしてはいけないという思いからです。 また、Gaffiot羅仏辞典も D 部全体を追加しました。これでようやく1/3に なります。あと数年で第一段階の全文テキスト化が終了すればいいのですが。 今年も頑張ります。
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昨年秋、1年以上かけて取り組んだWeekley英語語源辞典の電子化が終わった頃、 何か面白い辞書はないかと書店に出かけて、白川静先生の『常用字解 第2版』を 見つけました。白川先生と言えば漢字の成り立ち・起源だなあ、これも語源 みたいなものか、と軽い気持ちでちょっと立ち読みし始めて、冒頭の一節に 強い衝撃を受けました。
(引用:ここから)
常用字解の編集について
戦後わが国の国語政策は、漢字の字数とその音訓の用法を制限するという、誤った方向をもって出発した。・・・古典は軽視され、文化の伝統の上にも大きな障害があらわれている。古典語で詠(よ)まれる短歌が、おおむね現代仮名遣いで表記されるというような事態が日常化しているのである。殊にわが国のように、歴史も古く、多くのすぐれた古典を持つ民族にとって、その理解が失われ、受容の機会が狭められているということは、わが国の文化の継承の上からも、容易ならぬ事態というべきであろう。
(引用:ここまで)
ろくに読めもしないくせに、西洋古典やらインド・ヨーロッパ語族の諸言語やらを あれこれ食い散らかす前に、私はまず、日本文学のための何かをしなければ、 と考えました。 最初に思いついたのは源氏物語の電子化です。 幸いなことに、渋谷栄一先生が原文のテキスト化のみならず、ローマ字版(かな)、 現代語訳に脚注までをパブリックドメインとして公開されていました。 ありがたく頂戴し、今までのノウハウから EPWING にしてみました。 辞書でなくて本のためなのか、どうもしっくり来ないので、初めての試みとして ePub にもしてみました。 ePub がどれほど普及しているかはよくわかりませんが、ePub v3 では縦書き・ルビ 表示もできるようになりました(ビューアーソフトによっては非対応です)。 私のような素人作で、専門の校正を経たものではありませんが、最初の一歩としては なかなか良い感じになっているのではと思っています。
http://classicalepwing.sourceforge.jp/download.html#genji
ePub については、さる方のご指摘でちょっと試してみただけですが、前世紀の遺物 たる EPWING と違い、最近の HTML をベースにしていますので、当然ながら内部は Unicode で、記号付文字・ギリシャ語などの面倒な外字作成が不要なだけでも 助かります。 EPWING を作る EBStudio に渡す原稿ファイルも実は簡易 HTML なので、ePub作成 作業でも今までのノウハウがかなり生きます。 ただし、ePubは小説などの「本」を想定しているようで、「辞書」として使うことは 見出し検索機能がないため、難しそうです。 使えそうなものが出来るかどうか、いろいろ試してみるつもりです。
Gaffiotの電子化もD部まで終わりました。これで、ページ数で全体の3分の1になります。 いつ挫折するかと思いながら進めてきましたが、事故でもなければ大丈夫そうです。 最終ページを目指して、淡々と進めていきます。
なお、別プロジェクトで、ロワイヤル仏和中辞典のEPWING化ツールを公開していますが、 R部の単語が千件以上欠落している問題がありました。修正しましたので、こちらもどうぞ。
http://projectzephyr.sourceforge.jp/royal-frjp.html
では。